Camtasia を使って反転授業を行っている学校を訪問して、Camtasiaの活用方法などをお伺いし、紹介していきます。

今回は、早稲田大学人間科学学術院教授博士(教育学) 向後千春(こうごちはる)教授にインタビューいたしました。(2018年10月)

 

bjs: 先生は、日本語教師研修「反転授業入門」事前講義ビデオ(注)の中で、Camtasiaを使用して動画をつくることを 紹介して頂いていますが、どのような経緯で、このビデオをお作りになりましたか?

向後教授:   私は、ブレンド学習、反転授業というテーマでの講演依頼が数多くあって、そうすると この学習方法は、オンデマンドで予習をして、教室ではグループワークという組み合わせという説明になるんです。 一通り説明を終えると、オンデマンドは何で作っているのかという質問が必ず出てくるので、Camtasia、 TechSmithと言って宣伝しているんですよ。誰も知らないけど(笑) アメリカではほとんどの学校の先生がCamtasiaを使ってるんでしょ、そういう話は聞いていますけど。 みんなに毎回聞かれるのでビデオを作りました。

bjs:  先生は最初どこでCamtasiaをお知りになったのでしょうか?

向後教授:   確か前は違う名前だったんでしょ。しかもMac版しかなかった。 私はずっと昔からMacを使っていて、個人で撮れてMpeg4で編集ができるMacのソフトを探していて、見つけて、 それ以来使っています。もう10年くらいかな。 当時Mac版は7,000円くらいで、安いし、買うのに大きな決心が必要なかったです。

bjs : Camtasiaの前はどうされていたのでしょう?

向後教授:   2003年から人間科学部、通信教育課程のe-スクールをやっています。これは124単位全部を オンデマンドビデオの受講とbpsの討論、テスト、レポートなどで取れる講座です。 全ての授業をオンデマンドにするために、キャンパスには2つのスタジオがあるし、教室収録では専任の カメラスタッフで撮影をやってきました。 スタジオ撮影というのはけっこう億劫で、ひとりでカメラマンに向かって話すというと硬くなります。 なので数年前から自分の研究室でCamtasiaで収録するようになりました。

bjs : ブレンド型(反転授業)はいかかでしょうか?

向後教授:  私の専門はe-ラーニングです。 e-ラーニングだけだとドロップアウトが多く、 e-ラーニングと対面型を合わせればモチベーションも上がってよいという考え方は前からありました。 e-スクールでの教材を通学の学生にも使おうとして、今のブレンド型授業につながっています。 利点は、私はレクチャーをする必要がなく、教室に入ったらすぐに本題に入れる、すぐにグループを作って グループワークができる。学生は今日やることの基礎知識が既にある、ということです。 ビデオの中には、クイズとかミニ課題を入れておくと、みんな観ますね。採点されてると思いますから(笑)

bjs:  Camtasiaでの動画はどのように作られていますか?

向後教授:  30分くらいのビデオを収録したら、簡単な編集でYoutubeにUPします。 LMSにもアップしますが、Youtubeは学生さんが電車で見れるからです。 トランジッションを入れるだけで、そのままほぼ編集しません。 トラックには、スライドと自分の顔をいれて、最小限の機能しか使っていませんが、それで十分です。 ひとりで気楽にしゃべれるので、とても気に入っています。

bjs:  生徒さんの反響はいかがですか?

生徒さん:  スライドと声の説明が同時にあるのでとてもわかりやすいです。 画像も鮮明なのでノートもとりやすいし、音もクリアです。 教室は字が不鮮明だったり、声にノイズが入ったりすることもあります。

bjs:  忙しい先生、ビデオを作ることが大変だと躊躇している先生に対してどのようにアプローチしていけばよいでしょうか?

向後教授:  多くの先生は放送大学のようなものを想像してしまうので、ハードルが高い。 私も最初のうちは試行錯誤でした。プロの作ったビデオではなく、ふつうに話しかけるというアプローチにしたら かなりハードルは下がると思う。 また先生へのメリットがあります。 ひとつは、同じことをしゃべらなくていい。1回のビデオで、3年は使える。 そして、後でテープ起こしをしてもらうと、それがテキストになりますから、 先生にとっては財産になり、上手くいけば本として出版できます。 また、1回使ったものはYouTubeにアップすれば社会的貢献にもなります。 まずは気軽な感じで、授業の予告編に使ったら良いと思います。 そうすると授業の前に生徒の頭ができているし、どの教科でも使えると思います。

bjs : 今後どのようなビデオを考えていますか?

向後教授 : ソフトの操作コンテンツ、excelの操作を説明するような動画、マイクロコンテンツと言っていますが、 1分程度の短い動画を100本、200本を作りたい。 これはムークス(MOOCs)とは別の動きで、日本中の大学教員が作ったらいいと思う。 言葉だけではなく操作画面付きなので学生にもすぐわかるというのが良いですね。 そういう意味では、教員に限らず、みんなが作って、教えて教えられる社会になったらよいと思う。

bjs:  今日はいろいろとお話をいただき、どうもありがとうございました。

(注)向後教授の「反転授業入門」のビデオ